イヴ・サンローラン、ピエール・バルマン - 2014年11月モロッコ雑感(8)
ヨーロッパから数多くの人が過去、現在でもモロッコ に居を構えている。モロッコ の何が彼らを惹きつけたのか分からない。
イヴ・サンローランは当時、仏領だったアルジェリアで生まれている。
ファッションの世界で彼が残した数々の偉業の中でも晩年に彼がモロッコ・マラケシュの別荘をMusee Art Berbereに改修し世界、唯一無二のBerbereコレクションを作り上げた事はあまり知られていない。
竹林の中での静かなたたずまいと 対照的な建物の原色の世界には言葉を失う。
その庭に一歩足を踏み入れただけで次元を超えた感覚に襲われる。
彼独特の感性は北アフリカの血とパリのどんより重く沈んだ空気の中に漂う精神をくすぐって止まない独特な文化の重みを感じさせる。
建物の外側はどこまでも抜けるようなコバルトブルーと原色の黄色で装飾されており、博物館の中は年輪を刻んだ艶やかな木目を見せる板で静かにほの暗い明かりの中、数え切れない年月を得たであろう、恐らくはBerbereの日用雑貨、装飾品、衣装であったと思われる品々の精緻な創りと色合い、イヴ・サンローランが愉しみながら執拗に追い求めた色彩と造形の集大成が其処にある。大昔はこの地も緑生い茂るオアシスであった事が偲ばれ豊かな木々の小板が頬にふれ微かに漂う芳香が時を忘れさせる。
方やピエール・バルマンの別荘も此の地で趣のあるレストランとして粋人を集めている。
モロッコの常として高い塀をめぐらせた囲いの中に之もれもまた目を見張る竹林が生い茂り夾竹桃などが色を添え、蛍光灯であろうかほの暗い消え入りそうなコバルト色が辺りに沈んでいる。
給仕人は音も無く客の間を行き来しワイングラスに何かが触れる音しか聞こえない。時々、生ぬるい風が運んで来る香水の香りが艶やかな空間を創り出だしている。
塀の外はフェラーリとらくだが同じ路上を走り抜けている。この時空を越えた空間が人を魅了して止まないのだろう。